雇用主給与支払届出書(エンプロイヤーズリターン)と個人所得税申告・査定 (PPW No.581掲載記事)

 香港の日本語フリーペーパー「PPW(ぽけっとページウィークリー)」No.581号(2017年3月第1号)にKRSのコラム「雇用主給与支払届出書と個人所得税申告・査定」が掲載されました。

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<以下、記事全文、一部PPW掲載分から追加あり>

雇用主給与支払届出書(エンプロイヤーズリターン)と個人所得税申告・査定

例年4月と5月は香港では雨が多くなり、場合によってはサンダーストーム(嵐)に見舞われますが、各法人や個人様にとっても、この時期は給与に関連した届出・申告という“嵐”への対応シーズンになると存じます。今回のコラムでは、給与支払届と個人所得税の査定までを説します。嵐への備えの一助となれば幸いです。

Salary Tax – Employer’s Return of remuneration and pensions

(BIR56A, BIR 56B)- 雇用主給与支払届

 エンプロイヤーズ・リターンと呼ばれます。毎年4月の初めに、税務局IRDから全ての雇用主に発行されるフォームです。

 商業登記証Business Registration Certificate に記載の住所宛に届き、雇用主は、記載の発行日から1か月以内に申告する必要があります。新規に設立された会社や休眠状態の会社には、このフォームが発行されないことがあります。それでも、給与の支払いがあった場合は、雇用主は税務局に通知する義務があります。

 56 Bは従業員一名につき一枚ずつ用意します。各従業員の個人情報と、4月1日から3月31日までの支払い給与額を記載し、社印押印の上、雇用主Employerが署名をします(従業員でなく)。会社側は、当56Bのコピーを各従業員に渡す必要があります。

 56Aはいわば届出の表紙で、各法人で1通だけ作成します。該当する提出方法を選択し、提出する56Bの枚数を記載します。こちらにも雇用主が署名します(社印は不要)。

 当届出には以下の提出方法があります。

1)書面のみ : 56Aおよび56B(人数分)

2)データおよび書面2通:IRDが無料で提供しているIR56b作成ソフト(IRD IR56B Software)を用いて作成した56Bの人数分のデータを収めた電子媒体(CD-ROM等)、56A書面に加え、従業員リストList of Employee(別称Control List。当該ソフトで自動作成される)を書面で提出。リストにも雇用主の署名が必要。

上記のほか、香港政府のシステムeTaxにアカウントを作成し、Webから直接入力する方法や、IR56B作成ソフトで作成したデータをWebからアップロードする方法もあります。

Tax Return – Individuals (BIR60)- 個人所得税申告

 5月ごろ、先述の雇用主給与支払届の提出を受けて、税務局IRDから従業員個人宛(自宅)に発行されるフォームです。従業員自身が記入・署名の上、発行から1か月以内にIRDに提出する必要があります。

 会社から受領した56Bのコピーをもとに、給与(雇用主が複数の場合は併記)とコミッション(Part4.1)、会社借り上げの住居の情報(4.2)等を記載します。また、政府認定の自己教育や、政府認定のチャリティーへの寄付等があれば、控除を受けることができます(4.3)。配偶者も収入があり、かつどちらかの収入が基礎控除額より少ない場合は、ジョイント・アセスメントを選択することで、節税できる可能性があります(4.4)。

 その他、所有不動産Propertyからの所得(Part3)、個人事業所得Profit(Part5)がある場合は併せて申告します。また、住宅ローンの利子支払い (Part7)、扶養家族(Part8)がある場合は所定の控除を受けることができます。Part3とPart5に該当する場合は、パーソナル・アセスメント(Part6)を選択することで、節税できる可能性があります。

Salaries tax – Assessment Demanding Final Tax and Notice of Provisional Tax(I.R.C.6401)-税額通知書

 BIR60申告に基づき税務局が査定の結果、個人宛に発行されるフォームです。P1の査定結果とP2の税金計算書Tax Computationを確認し、問題がなければ、P3のバウチャーPayment Voucher(請求書)に記載された期限までに支払います。支払手段は、バウチャーの裏面に記載のとおり、銀行ATM、小切手の郵送、郵便局、コンビ(HKD5,000以下の場合のみ)など各種用意されています。この期限に遅れた場合、査定額の5%分、半年を経過した場合はさらに最大10%分のペナルティが課せられますので注意してください。

 所得から各種控除Allowanceが引かれたものが課税対象所得Chargeable Incomeとなります。2015/16査定の家族控除は、基礎控除HKD120,000、配偶者控除HKD240,000、子ひとりにつきHKD100,000のほか、政府認定の自己教育・寄付などがあります。

 税額は、以下の計算のいずれか少ない方となります(2015/16年度)。

 ・基本税率Standard rate:所得(控除前)の15%

 ・累進税率Progressive rate:課税対象所得(控除後)の2~17%

 実際の通知文に注記をつけていますので、下記のポイントに留意いただきながら参照いただければ幸いです。

 ポイントの1つ目は、予定納税(Provisional Tax、予納)という仕組みです。香港では納税者の申告に基づき税務局が査定し、納税者に通知したうえで納税される仕組みを採っているため、税務局はかなり後になって税金を徴収することになります。この遅れの対応策として、前もって次年度の見込み税を徴収するのが予定納税です。この予納は、次の年度も当年度と同じ所得があるとみなして計算されます。つまり、香港で初めて働き始めた方が収入を得た場合、初回の税務申告では2年分の納税が必要となります。逆に、収入が前年より落ちた場合は、前年に多めに納めた分が還付Tax repayableされることもあります。

 2つ目は、IRDは減税措置Tax Reductionを設けていることです。2015/16年度の場合、個人所得税は最高HKD20,000を上限として75%減税されます。ただし、次年度も同じ措置が講じられるかは未定なので、予納の額面からは優遇分は減額されません。

 3つ目は納税を2回に分けての分割払いTwo installmentsを認めていることです。通常、1回目の期限は翌年1月、2回目は翌年4月に設定されます。ただし2回目の支払期限まで待ってもらえるのは予定納税額の25%分のみです(ただし、少額の場合は一括払い)。もちろん、1回目の期限までに全額まとめて納税しても構いません。

異議申し立てとホールドオーバー

 税額通知書の査定結果に異議がある場合はオブジェクション(Objection)、また予定納税を留保したい場合はホールドオーバー(Holding Over:期間延長・先送りの意)と呼ばれる申し立てができます。いずれも発行日からおよそ1か月位以内に書面で通知が必要です。

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