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法人税 (3): 減価償却 (PPW No.559掲載記事)

 香港の日本語フリーペーパー「PPW(ぽけっとページウィークリー)」No.559号(2016年9月第5号)にKRSのコラム「法人税-減価償却費の控除について」が掲載されました。

 PPWの記事はコチラ (PPWのサイトにジャンプします)

<以下、記事全文、一部改変あり>

法人税 — 減価償却費の控除について

法人税(2)課税対象所得と控除のコラムでは、所得と控除について会計上と税務上の扱いの違いを解説しましたが、資産の減価償却についても会計上と税務上とでは扱いが異なります。日本での会計上の定石である、定額法、逓減残高法や級数法などの減価償却手法での控除(損金算入)は香港の税務上は認められません。本コラムでは、産業用建物、商業用建物、および工場・機械設備に対する資産償却の控除について解説いたします。

(1)産業用建物 Industrial building and structure

指定の産業に使用される建物に対する資本的支出には、下記の特別控除が認められます。指定の産業とは、工場内でなされる産業、運送業、ドック(船渠)業、水道・電気・ガス・電話事業、製品の製造・加工・保管業、または農業等です。

  • 初年度特別償却Initial Allowances (I.A.):20%

  • 年次償却Annual Allowances(A.A.):取得費用の4%(定額)、全額損金算入されるまで

 資産を処分する際、処分価値(その資産の処分により得た金額。disposal price)が残存価値(償却が終わっていない金額。評価減後価格。Written down value=W.D.V.)を下回る場合、その差額を損金算入できます(差額償却。Balancing allowance)。一方、処分価値が残存価値を上回る場合は、その差額は課税対象となります(差額賦課。Balancing charge)。

(2)商業用建物 Commercial building and structure

 上記(1)には該当しないが、貿易、専門業またはビジネスに使用する建物、例えば事務所等に対する資本的支出には、次の控除が認められます。

  • 初年度特別控除:なし

  • 年次償却:取得費用の4%(定額)

資産を処分する際は、(1)と同様です。

(3)工場と機械設備 Plant and Machinery

 課税所得を得るために要した工場と機械設備の取得に対する資本的支出は、以下の通り税務上控除できます。

  • 初年度特別償却: 取得費用の60%。

  • 年次償却:残額(評価減後価格、未償却額)の10%、20%または30%(定率法)。償却率は設備の耐用年数に応じて種別分けされます。同じ償却率の設備は“プールPool”にグループ分けして計算します。償却率の種別分けは、税務局発行の取扱通達DIPN No.7の別添Appendixに示されています。

 事業を中止する場合、その事業を承継する者がいなければ、その工場/設備の処分価値と残存価値の差に応じ、(1)と同様に差額賦課または差額償却が生じます。

 なお、IRO(内国歳入法)により、工場と設備が香港の外で使用されている場合は、減価償却の控除は認められません。

(4)税制上の優遇措置 Tax incentives

 香港においては、他国との競合のため、税制上の優遇措置があります。固定資産の償却に関連する優遇措置を下記に挙げます。

  • 特に製造に関連する工場および機械設備、またコンピューターのハードウェア・ソフトウェアに関する資本的支出は、即時損金算入、すなわち取得したその期に100%の償却が可能です。

  • 建物・事務所等の改修費(リノベーション等)については、20%ずつ5年の間控除を受けることができます(改修は、収益的支出ではなく資本的支出(固定資産)とみなされるため、経費としてその期に一括控除はできません)。

  • 特定の環境に配慮した設備に関しては、資本的支出の加速償却が認められています。機械設備および工場は、費用が発生した年に100%の控除が可能です。建物及び土台に関しては、年率20%の控除を連続する5年間受けることができます。

  • 特定の環境対応車両についても、100%控除を受けることができます。

 以上、3回にわたり香港の法人税に関連するコラムを掲載させていただきました。弊社はプロの助言でお客様のビジネスを支援することを理念としております。会計・税務業務のほか、会社秘書役やビザ申請代行等を提供しておりますので、お気軽にご相談くださいませ。

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